サイトを作り直すことになり、制作会社から「ドメインの管理会社と、サーバーの契約情報を教えてください」と言われた。社内の誰も答えられない。 この記事は、その状態から出るための手順です。 確認するのは4項目。順番に進めれば1時間で終わります。作り直しで起きる事故のほとんどは、サイトではなくメールで起きます。 なぜそうなるのかを先に書いてから、確認の手順に入ります。
作り直しで止まるのは、サイトではなくメール
サイトが1日見られなくても、その日の受注はほとんど変わりません。取引先は困って電話をかけてきます。
メールは違います。
止まると困る順に、受注・見積・請求・採用応募
会社の info@ と個人の 名前@ は、サイトと同じドメイン名にぶら下がっています。example.co.jp でサイトを公開しているなら、メールも info@example.co.jp です。どちらも同じ設定で行き先が決まっているため、サイトの引っ越し作業でメールの行き先も動きます。
止まると、次の4つが同時に止まります。
- 取引先からの注文メール
- 見積の依頼と、こちらからの返信
- 請求書の送付(電子で送っている場合)
- 求人サイト経由の応募通知
3番目は月末に効きます。4番目は気づくのが最も遅れます。
復旧しても、その間のメールは戻ってこないことがある
設定を戻せばメールは再び届くようになります。ただし、止まっていた間に送られたメールが後から届くとは限りません。
行き先が古いサーバーのまま残っていれば、そこに溜まります。行き先が消えていれば、送信側にエラーが返ります。厄介なのは中間の状態で、受け取ったことになっているのに誰も読めない場合です。送信側にエラーが返らないので、相手からは「送ったのに返事がない会社」に見えます。
実際に見た例では、気づいたのは1週間後でした。取引先から電話で「先週の見積、どうなりましたか」と聞かれて発覚しています。
確認する4項目
ここから手順です。制作会社に聞く前に、自社で確認できます。
①ドメインは、どこで、誰の名義で契約されているか
最初に見るのは JPRS(日本レジストリサービス)の WHOIS です。whois.jprs.jp で自社のドメイン名を検索してください。
ここで結果が分かれます。
| ドメインの種類 | WHOIS で見えるもの |
|---|---|
co.jp などの属性型 | 登録している組織名が表示される。 非表示にする設定が用意されていない |
.jp(汎用型)・都道府県型 | 登録者名を非表示にする設定があるため、伏せられていることがある |
co.jp を使っているなら、ここで登録者が自社かどうかが分かります。自社名でなければ、その時点で確認すべきことが1つ増えます。
WHOIS で分からない場合は、次の2つをたどってください。
- メールを「ドメイン」「更新」「自動更新」で検索する。 更新通知は年1回必ず届きます
- クレジットカードか口座の明細で、年1回の少額の引き落としを探す。 ドメインの費用は年に数千円程度です
②サーバーは、どこで、何の契約か
サーバーは月額か年額で払っています。金額はドメインより一桁大きく、共有型のレンタルサーバーなら年間で数千円から数万円の幅に収まります。
注意が要るのは、制作会社に「月額◯円」でまとめて払っている場合です。この形だと、サーバーの契約者は制作会社で、自社には契約が存在しません。解約すればサイトは消えます。請求書の名目が「保守費」「管理費」としか書かれていないときは、中に何が含まれているかを聞いてください。
③メールは、サーバーに付いているか、別サービスか
4項目のうち、ここが最も早く、自分だけで確認できます。
普段使っているメールソフトを開き、アカウントの設定画面を出してください。「受信サーバー」「受信メールサーバー」という欄があります。そこに書かれている文字列で判定します。
| 受信サーバー名 | 意味 |
|---|---|
サーバー会社の名前が入っている(xserver.jp sakura.ne.jp lolipop.jp など) | サイトと同じサーバーにメールが乗っている。引っ越しで止まる可能性がある |
imap.gmail.com | Google Workspace を使っている。サイトとは別 |
outlook.office365.com | Microsoft 365 を使っている。サイトとは別 |
後者2つなら、メール本体は動きません。ただしドメイン側の宛先設定を引き継がないと届かなくなります。 「メールは Google なので関係ない」と言い切らず、制作会社にその旨を伝えてください。
④管理画面に、今、自社がログインできるか
「聞けば教えてもらえる」と「自分で入れる」は別です。次の3つを、実際にログインして確かめてください。
- ドメインの管理画面
- サーバーの管理画面
- サイトを更新する画面
入れたら、IDとパスワードをその場で控えます。当社は紙かパスワード管理ソフトへの保存をお願いしています。担当者の記憶とブラウザの自動入力だけに残っている状態は、担当者が変わった瞬間に消えます。
前任者のアドレスで契約されていたとき
最も多い詰まり方がこれです。契約の連絡先が退職した人のアドレスのままで、更新通知が誰にも読まれていません。
ここでJPドメイン名の仕組みを押さえておくと、慌てずに済みます。JPRSは、有効期限までに廃止されなければドメイン名を1年間自動更新します。 つまり、期限が来た瞬間に消えるわけではありません。実際に消えるのは、契約している事業者への支払いが止まり、その事業者が廃止の手続きを出したときです。
廃止されたあとの扱いは、ドメインの種類で大きく違います。
| 種類 | 廃止後の状態が続く期間 | 登録回復の申請ができる期間 |
|---|---|---|
.jp(汎用型)・都道府県型 | 翌日から1か月間(月末まで) | その状態になった月の1日から20日まで |
co.jp などの属性型 | 翌日から6か月間(月末まで) | 同じくその月の1日から20日まで |
出典はJPRSのJPドメイン名のライフサイクルです。
co.jp を使っている会社には猶予があります。逆に .jp を使っていて気づくのが遅れると、情報が削除され、同じ文字列を第三者が登録できる状態になります。 ここまで来ると取り戻す手段はありません。
復旧できるかどうかの分かれ目は、名義です。自社名義であれば、事業者に法人として申し出て、登記簿と支払いの記録で確認を取り、連絡先を書き換えられます。制作会社の名義で、その会社が廃業している場合は、手の打ちようがありません。
今日できることが1つあります。契約の連絡先アドレスを、個人のアドレスから info@ や soumu@ のような部署のアドレスに変えてください。 管理画面にログインできるなら、5分で終わります。
メールを移すか、残すか
制作会社から「この機会にメールも新しいサーバーへ移しますか」と聞かれることがあります。
当社は、移さない方を初期値にしています。 作り直すのはサイトであって、メールではないからです。
移す理由があるのは次の2つだけです。
- 今のサーバー契約そのものを解約する場合
- メールの容量が足りない、迷惑メールが多すぎるなど、今の環境に具体的な不満がある場合
どちらにも当てはまらないなら、サイトだけ新しい場所に移し、メールは今のまま置いてください。両方を同時に動かすと、何かあったときに原因がサイト側かメール側か切り分けられなくなります。 切り分けられない障害は、復旧が遅れます。
メール環境を変えたいのであれば、サイトの公開が落ち着いてから、別の作業として時期をずらしてください。
発注先に必ず書面で確認する3つ
口頭で聞いて済ませず、メールか書面で残してください。
- 切り替え当日、メールが止まる時間があるか。 あるなら何時から何時までか
- 古いサーバーをいつまで残すか。 切り替え後1〜2週間は残し、両方を確認するのが実務上の安全策です
- 公開後、ドメイン・サーバー・サイトの管理権限が誰の手元に残るか
3番目が一番大事です。ここを確認しないまま発注すると、10年後に同じことが起きます。当社は、公開の最後にデータと管理権限を会社側へ引き渡す手順を入れていて、これは進め方のページに書いてあります。引き渡しを渋る会社は、次の作り直しのときに今と同じ立場になります。
この確認で防げないこと
4項目を確認しても、防げないものがあります。
古いサーバーが契約者不明のまま動き続けているケースです。誰も解約できず、費用だけが引き落とされ続けます。この場合、新しいサイトを公開する作業自体は進められますが、古い契約は残ります。金額が小さいために放置されがちで、気づくのは何年も後です。
もう1つは、ドメインが制作会社の名義で、その会社が連絡に応じない場合です。ここから先は当社を含む制作側で解決できる範囲を超えます。弁護士か、ドメインを管理している事業者への直接の相談になります。
まとめ
普段使っているメールソフトのアカウント設定を開いて、受信サーバー名を控えてください。4項目のうち、これだけは今すぐ、誰の助けもなく確認できます。ここが分かると、作り直しでメールが止まるかどうかの見当がつきます。
当社では、相談の段階でこの4項目を一緒に確認しています。会社名とサイトのURLをお知らせください。
この記事を書いた人
しがビズ(株式会社トリプルエッグ)
滋賀県の中小企業向けに、会社サイトの作り直しと、生成AIの業務導入を行っています。古いドメインやメールの扱いはよくある質問にも書いています。
出典
- JPRS「JPドメイン名のライフサイクル」
- JPRS「Whois登録者情報非表示設定」