結論から書きます。足す項目は4つ、必須にするのは2つだけです。 サイトのフォームから来る問い合わせが「見積をお願いしたい」の一行だけで、そこから材質と数量と納期を聞くメールを3往復してから図面が届く。1件に2日かかっている。この状態を直すための記事です。 項目を増やすとフォームの通過率は下がります。それを承知で足す理由から書きます。
項目を増やすと通過率は下がる。それでも足す理由
これは事実なので、先に認めます。
1項目で約2%という数字の読み方
BtoBサイトのフォーム改善をまとめた才流の記事は、必須項目を会社名・氏名・メールアドレス・電話番号・お問い合わせ内容の5つとしたうえで、入力項目が5を超えると通過率が下がり、1項目削除ごとに通過率は約2%向上するという数字を出しています。
正しい指摘です。そして、ここが判断の分かれ目になります。
項目を4つ足せば、単純計算で通過率は8%前後下がります。月20件の問い合わせなら、1〜2件減る計算です。
見るのは通過率ではなく、1件あたりの往復回数
当社は、通過率より往復回数を先に見ます。
理由は、BtoBの請負業では1件の重みが違うからです。資料請求を1,000件集めるビジネスなら、通過率2%は大きい。月20件の見積依頼を受ける加工業では、1〜2件減ることより、残る18件の往復が3回から1回になる方が効きます。
営業1人が1件に2日使っているなら、18件で36日分。往復が減れば、そこが半分以下になります。減った1〜2件は、材質も数量も決まっていない段階の相談だったことが多い。
ただし、これは業態によって逆転します。判断の材料は次の2つです。
- 1件あたりの受注金額が大きいか(大きいほど項目を足す方が得)
- 問い合わせの段階で仕様が決まっているか(決まっているほど足す方が得)
どちらも「いいえ」なら、項目は足さない方がいい。
足す4項目と、必須にする2つ
才流の5項目に、次を足します。
| 足す項目 | 必須か | 理由 |
|---|---|---|
| 材質・品名 | 必須 | これが無いと見積の入口に立てない |
| 数量 | 必須 | 単価が桁で変わる |
| 希望納期 | 任意 | 未定の段階の相談を拒まない |
| 図面の添付 | 任意 | 図面がまだ無い相手を落とさない |
材質・品名(必須)
自由記述より、よく出る材質を選択肢にして、最後に「その他」を置く形が早い。相手が正式な規格名を知らなくても選べます。
選択肢に入れるのは、自社が実際に扱っている材質だけにしてください。扱っていない材質を並べると、対応できない相談が来ます。選択肢そのものが対応範囲の宣言になります。
「その他」を選んだ人には自由記述欄を出してください。ここに書かれた材質を半年ためると、選択肢を増やすべきものが分かります。
数量(必須)
「1個」「2〜10個」「11〜100個」「101個以上」「継続(月◯個)」。範囲で足ります。正確な数を聞くより、継続かどうかが分かる方が重要です。
継続の選択肢を必ず入れてください。継続の案件は単価も工程も見方が変わるので、最初の返信の内容が変わります。単発の見積と同じ返信を出すと、相手は「量産の相談には向かない会社」と受け取ります。
希望納期(任意)
任意にする理由は、納期が決まっていない相談を拒まないためです。「未定」の選択肢を必ず入れてください。
そして、選択肢に自社の最短納期より短いものを置かないでください。 「3日以内」を選べるようにしておいて毎回断ると、その回数だけ失注します。最短が10営業日なら、一番短い選択肢を「2週間以内」にします。
図面の添付(任意)
ここが本題です。必須にしないでください。 理由は最後の章に書きます。
添付欄のすぐ上に、受け付ける形式と容量を書いてください。「PDF・DXF・JPEG、20MBまで」の1行です。これが書いていないと、相手は試す前に諦めます。
図面を受け取るための設定
才流を含め、BtoBフォームの解説記事でファイル添付に触れているものを見たことがありません。実務では、ここで詰まります。
対応する拡張子
受けられるようにしておくのは、最低限この4つです。
.pdf── 最も多い。相手がCADから出力して送る.dxf── 図面データ。CADで開ける.jpg/.png── 手書き図面をスマートフォンで撮ったもの.zip── 複数枚をまとめたもの
3番を落とさないでください。 中小企業同士の取引では、手書きの図面をスマートフォンで撮って送る相手が実際にいます。
容量の上限
初期設定のまま5MBになっているフォームが多い。CADから出力したPDFは、1枚でも5MBを超えることがあります。
上限を上げるか、超えた場合の案内を出すかのどちらかが要ります。 上げる場合、サーバーの設定側にも上限があるので、制作会社に「フォームの添付上限を20MBにしてほしい」と依頼してください。
そして、自分で1回試してください。 実際の図面を1枚添付して、送信できるか。ここを確認していない会社がほとんどです。送信できずに諦めた相手がいても、こちらには何の記録も残りません。
正直に書くと、このテストが面倒です。図面を用意して、送信して、受信箱を確認して、容量を変えてもう一度。上限を決めるまでに3〜4往復します。30分は見てください。
そうは言っても、フォームをいじると壊れるのではないか、と思われるかもしれません。項目を足す作業と容量の上限を変える作業は、フォームの設定画面の変更だけで済むことが多く、サイト本体には触りません。制作会社に頼めば数時間の作業です。ただし変更したら必ず自分でテスト送信してください。 設定を変えた直後に届かなくなる事故は、実際に起きます。
添付できない相手への逃げ道
上限を超える、拡張子が対応していない、社内規程で添付できない。こういう相手のために、フォームの近くに1行置いてください。
> 添付できない場合は、送信後にお知らせします専用アドレス宛にお送りいただけます。
これが無いと、その場で離脱します。
届いた図面はどこに保存されるのか
見落とされる論点です。
フォームの仕組みによって、添付ファイルの扱いが違います。メールに添付されて届くものもあれば、外部のフォームサービスのサーバーに保管され、管理画面からダウンロードする形式のものもあります。
後者の場合、預かった図面が第三者のサーバーに置かれます。
取引先と秘密保持契約を結んでいるなら、ここは確認が要る箇所です。契約に「第三者への開示」の制限があるとき、外部サービスへの保管がそれに当たるかどうかは、契約の文言によります。考え方は取引先からAI利用を聞かれたときに出す、A4 1枚と同じで、契約・サービスの規約・自社の運用を並べて確認するという順序になります。
最低限、制作会社に次の2つを聞いてください。
- 添付ファイルは、どこに、どれだけの期間保存されるか
- 保存されたファイルを削除できるか
必須にしない方がいい場合
図面の添付を必須にすると、往復はさらに減ります。ただ、図面がまだ無い段階の相談が来なくなります。
「こういうものを作りたいが、図面はこれから」という相談は、自社の設計力を出せる案件でもあります。そこを取りに行きたいなら、添付は任意のままにしてください。
もう1つ。項目を足しても、サイトに対応範囲が書かれていなければ効果は薄いです。何ができる会社か分からないまま材質を聞かれても、相手は書けません。対応範囲の書き方はBtoBの会社サイトに書くのは、強みではなく対応範囲の数字にまとめました。先にそちらを整えた方が順序として早い。
まとめ
自社のフォームを開いて、実際の図面を1枚添付して、自分宛に送信してください。通らなければ、項目を足す前にそこが先です。
この記事を書いた人
しがビズ(株式会社トリプルエッグ)
滋賀県の中小企業向けに、会社サイトの作り直しと、生成AIの業務導入を行っています。
出典
(必須5項目、1項目削除ごとに通過率が約2%向上)