「2024年4月からウェブアクセシビリティが義務化されました。月額◯千円で、読み上げと文字拡大のボタンをサイトに付ければ対応完了です」。そんな営業メールが会社に届いた。総務の担当者として、本当に義務なのか、払う必要があるのかを確かめたい。 この記事は、その判断のためのものです。何が義務になったのかを国の資料で確かめ、読み上げや文字拡大のボタンで何が解決しないのかを書きます。そのうえで、製造業や建設業の会社サイトで先に直すべきところを挙げます。 先に結論を書きます。義務になったのは、障害のある人から求められたときに配慮することです。サイトの改修そのものではありません。そして、デジタル庁は、読み上げや文字拡大のボタンを付けることを「非推奨」としています。 当社は、読み上げや文字拡大のツールを扱っていません。そのうえで書いています。

義務になったのは「求められたときの配慮」で、サイトの改修ではない

2024年4月1日に、改正障害者差別解消法が施行されました。これで、会社などの事業者も、障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務になりました。それまでは努力義務でした。

合理的配慮とは、障害のある人から「こうしてほしい」と求められたときに、負担が重すぎない範囲で、やり方を変えて応じることです。

ウェブサイトの扱いについて、デジタル庁の「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」(2025年10月版)は、こう整理しています。合理的配慮は義務。ウェブアクセシビリティへの取り組みは、合理的配慮を提供するための「環境の整備」として努力義務。

つまり、会社サイトを特定の基準に合わせることが、罰則つきで義務になったわけではありません。 atsoho の解説も、2025年のZennの記事も、同じように整理しています。

ただ、努力義務だから何もしなくてよい、ということでもありません。サイトが読めないことで、問い合わせそのものができない人が出るからです。

読み上げ・文字拡大のボタンを付けても、対応したことにはならない

営業メールで勧められるのは、サイトに数行の部品を足すだけで、画面の端に「読み上げ」「文字を大きく」「色を変える」のボタンが出るツールです。2024年のDXマガジンの記事のように、小さな会社には手軽に入れられるツールが有効だ、と勧める記事もあります。

デジタル庁のガイドブックは、これを2か所ではっきり「非推奨」と書いています。

  • サイトに追加する補助の仕組み(アクセシビリティ・オーバーレイ)は、OSやブラウザに元からある機能と重なることが多い。しかも、画面の読み上げソフトが必要とする文書の構造を補ったり、説明の無い画像に対応したりといった、一番大事な課題に対応できない場合が多い
  • 文字サイズの変更や読み上げの機能をサイト側で用意することも非推奨。助けが必要な人は、すでに自分の端末の読み上げや拡大の機能を使っている。サイトごとに別の機能を付けても、効果は極めて限られる

ガイドブックは、補助の機能を付けても「画像の代替テキストが無い」ことは解決されず、視覚に障害がある人にとってのアクセシビリティは上がらない、とも書いています。

ボタンは、見た目には対応したように見えます。中身は変わりません。 月額を払う前に、ここを営業の担当者に聞いてください。「デジタル庁のガイドブックが非推奨としている理由に、このツールはどう答えていますか」。

会社サイトで、先に直すのは「画像になっている文字」

読み上げソフトは、画像の中の文字を読めません。拡大すると、画像の文字はぼやけます。会社サイトで一番多い問題は、ここです。

製造業・建設業・卸売業の会社サイトで、よく見かけるものを挙げます。

よくある状態困ること直し方
電話番号・住所・FAX番号が、画像の中に書いてある読み上げで読めない。スマートフォンで押しても電話がかからない本文の文字にする
会社案内が、PDFか、スキャンした画像だけ読み上げで読めない。スマートフォンで小さすぎる中身をページの本文に書き起こす。PDFは補足として残す
地図が画像だけで、道順の文章が無い画像が見えない人には場所が伝わらない「◯◯駅から車で10分、国道◯号沿い」と文章で書き添える
問い合わせがフォームだけフォームが使えない人は、連絡の手段が無い電話番号とメールアドレスも、同じページに文字で載せる
採用情報や製品の一覧が、チラシの画像を貼っただけ読み上げで読めない。検索にも出ない本文の文字と表にする
写真に説明が無い何の写真かが伝わらない「5軸加工機での切削の様子」のように、写真の説明(代替テキスト)を入れる

最初の行だけでも直す価値があります。 電話番号が画像になっていると、スマートフォンで見た取引先の担当者も、押して電話をかけられません。障害の有無に関係なく、困っている人がいる。

会社案内のPDFは、作り直しのときに一番手間がかかるところです。中身を書き起こすのは、正直に言って面倒です。ただ、書き起こせば、検索にも出るようになります。事業の内容を数字で書く方法はBtoBの会社サイトに書くのは、強みではなく対応範囲の数字に、写真の撮り方は工場と製品の写真を、社員がスマートフォンで撮るに書きました。

配慮を求められたら、別の手段で応える

義務になったのは、求められたときに応じることです。サイトを今すぐ全部直せなくても、求めが来たときに応じる手段を用意しておけば、義務の中身には応えられます。

たとえば、こういう求めが考えられます。

  • 「フォームが使えないので、電話で問い合わせたい」→ 電話番号を案内し、電話で受ける
  • 「会社案内のPDFが読めないので、文字で送ってほしい」→ 本文をメールで送る
  • 「図面をFAXでしか送れない」→ FAXで受ける

大事なのは、問い合わせを受けた人が、断らずに別の手段を出せることです。 電話を受ける担当者に、一度だけこの話をしておいてください。図面の受け取り方を広げる話は見積の往復を減らす、図面を受け取れるフォームにするにもあります。

どう応じればいいか迷う場合は、内閣府の「つなぐ窓口」(電話 0120-262-701)に、事業者の側からも相談できます。

ここまでで足りない会社

ここまでの話で足りるのは、会社紹介と問い合わせのためのサイトです。次の場合は、もう一歩進める必要があります。

  • 官公庁や自治体の仕事を受けていて、発注者からJIS X 8341-3(日本のウェブアクセシビリティの規格)への対応を求められている
  • ネットで注文や予約を受けていて、操作の手順が多い
  • 取引先の大企業から、サプライヤーの条件として対応を求められている

この場合は、規格に沿った確認と改修が必要になり、費用も作り直しの範囲を超えることがあります。atsoho の記事は、簡易な診断で10万円前後、詳細な診断で30〜50万円程度という目安を挙げています。

しがビズの会社サイトの作り直し(1ページの場合、初期30,000円+月額1,900円、税別)でも、最初に上の表の状態を確かめます。規格への適合の確認は、料金表の範囲には入っていません。

まとめ

今日やることは1つです。会社サイトのトップページを開き、電話番号の上で長押しして、文字として選べるかを確かめてください。

選べなければ、画像になっています。そこから直せば、読み上げソフトを使う人にも、スマートフォンで見る取引先にも届きます。

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ご相談のときは、会社名、サイトのURL、時間がかかっている業務を書いていただくと、話が早く進みます。

この記事を書いた人

しがビズ(株式会社トリプルエッグ)

滋賀県の中小企業向けに、会社サイトの作り直しと、生成AIの業務導入を行っています。

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