サイトを作り直すことになり、「写真を用意してください」と言われた。撮影を頼むと別途費用がかかると言われ、社内で撮ることになった。その担当になったが、何をどう撮ればいいか分からない。 この記事は、その状態から1時間で終わらせるためのものです。 撮る対象は6つ。機材はスマートフォンで足ります。効くのはカメラの性能ではなく、時間帯と片付けです。 ただ、その前に確認することがあります。
先に安全と、撮ってはいけないもの
ここを飛ばすと、写真の出来以前の問題になります。
安全(吊り荷、高所、通路)
工場写真を撮り続けている写真家の西澤丞は、現場での心得で「安全第一は自分のためではなく、取材先に迷惑をかけないため」と書いています。社員が自社で撮る場合も同じです。
守るのは3つ。吊り荷の下に入らない。通路をふさがない。ファインダーを見ながら後ろに下がらない。 3番目が一番危ない。良い構図を探して下がると、背後のフォークリフトや段差が見えていません。
撮影中は必ず2人で行ってください。1人が撮り、1人が周囲を見る。これだけで事故はほぼ防げます。
撮ってはいけない4つ
写した後で気づいても遅いので、先に頭に入れてください。
- 他社から預かった図面 ── 机の上に置いたまま背景に写り込みます
- 設備の銘板(メーカー名と型式が読める状態) ── 同業が見れば設備構成と力量が分かります
- 取引先のロゴが入った梱包材・通い箱・図面枠 ── 取引関係が特定されます
- 社員の顔(本人の同意がないもの) ── 退職後の削除依頼まで含めて考える必要があります
2番は見落とされがちです。実績を匿名で書く話と同じ論点で、取引先名を出せない会社の、実績ページの書き方にも書きました。社名を伏せて実績を書いているのに、写真で設備がばれるのでは意味がありません。
西澤の記事は、機密について撮影時・撮影後・発表前の三段階で確認すると書いています。自社で撮る場合も、撮った後に一覧で見返す時間を取ってください。 撮っている最中は気づきません。
撮る対象は6つ
何枚必要かが分からないと終わりません。この6つで、1ページ分は埋まります。
①建物の外観
正面から1枚。看板と社名が読める距離で。曇りの日でも問題ありません。
②設備が並んでいる全景
工場の中を、奥行きが出る角度から。通路に立って奥を向くと、機械が並んで見えます。1台をアップで撮るより、並んでいる方が規模が伝わります。
③作業している手元
人の顔を入れず、手と工具と加工物だけ。この1枚が一番使われます。 会社案内でも、採用ページでも、実績ページでも使えます。
④加工した製品(単体)
白い紙か布の上に置いて撮る。背景に他の製品を入れないでください。
⑤検査・測定の場面
ノギスやマイクロメーターを当てている手元。品質管理をしている会社だと伝わります。BtoBではここが効きます。
⑥人(正面から撮らない)
後ろ姿、横顔、手元。顔が特定できない角度なら、同意のハードルが下がります。「いつも通り作業してください」と伝えて、構えさせないこと。 西澤も、作業員には演出を求めず「いつも通りに」と伝えると書いています。
時間帯で決まる
同じ場所でも、時間で写り方が変わります。
晴れた日の午前10時から11時半が一番安定します。理由は2つあって、太陽が高すぎず、工場のシャッターから入る光が横から回るためです。
避けるのは正午前後と、夕方です。正午は真上から光が来て影が濃くなり、夕方は色が黄色に転びます。
そしてもう1つ。シャッターや窓を背にして撮らない。 外が明るいので、手前の設備や人が真っ黒になります。逆光で撮った工場写真は、ほぼ使えません。外を背にするのではなく、外の光を受ける向きに立ってください。
片付けが、機材より効く
写真が使えなくなる原因の多くは、カメラではありません。写り込んでいるものです。
撮る前に10分だけ片付けてください。対象は決まっています。
- 床の養生テープ、ガムテープの切れ端
- 置きっぱなしの台車、パレット、脚立
- ペットボトル、空き缶、弁当の容器
- 壁に貼った色あせた掲示物
- 何年も使っていない棚の段ボール
これで写真の印象が変わります。高いカメラを買うより効きます。
撮る範囲だけ片付ければ十分です。 工場全体を掃除する必要はありません。10分で終わる範囲に絞ってください。
そうは言っても、片付けた工場を載せると実際と違うのではないか、と思われるかもしれません。載せるのは片付いている日の姿で、それは嘘ではありません。取引先が工場監査に来る日も、同じように片付けます。サイトの写真は、その日と同じ状態で撮ればいい。
蛍光灯の下で製品を撮ると緑がかる
実際によく起きる失敗です。
工場の照明が蛍光灯だと、製品の写真が緑っぽくなります。金属の色が濁り、樹脂の白が白く写りません。目で見ているときは気づかないのに、写真にすると分かります。
直し方は3つ。上から順に試してください。
- 窓際に移動して、外の光で撮る。 これが一番簡単で確実
- スマートフォンのカメラで「ホワイトバランス」を手動にする。 機種によって場所が違いますが、多くはプロモードや詳細設定にあります
- 撮った後に編集で色を調整する。 標準の写真アプリで「暖かみ」「色合い」を動かします
1番で解決することがほとんどです。製品は持ち運べるので、窓のある場所まで持って行ってください。
外注するのは1枚だけ
当社は撮影を別途費用としています(料金ページに記載)。全部を頼むと金額が大きくなるので、優先順位をつけてください。
頼むのは1枚。トップページに使う写真です。ここだけは、プロの機材と経験で差が出ます。暗い工場で動いている機械を止めずに撮る、天井の高い空間で奥行きを出す。スマートフォンでは届きません。
残りの5つは社内で撮ってください。手元、製品、検査の写真は、現場を知っている社員の方が良い瞬間を選べます。 外部の撮影者は、どの工程が見どころか分かりません。
採用ページも同じ考え方で、社員10人の会社の採用ページに「写真は1枚だけ本気で撮る」と書きました。
スマートフォンでは撮れないもの
正直に書いておきます。
暗い工場で、動いている機械を止めずに撮ることはできません。 手ブレするか、粗い写真になります。溶接のアークが入る場面も同じです。ここは外注するか、諦めて静止した対象に切り替えてください。
広い空間の全景も苦手です。 スマートフォンの広角で撮ると、手前が大きく奥が小さく写り、実際より狭く見えます。②の全景写真は、期待しすぎない方がいい。
それと、撮影そのものが面倒です。片付けに10分、6対象の撮影に30分、見返して撮り直しに20分。1時間は確保してください。 業務の合間に5分ずつ撮ろうとすると、時間帯がばらついて統一感のない写真になります。
まとめ
撮る前に、撮る場所を10分片付けてください。機材を変えるより、これが効きます。
片付けが終わったら、晴れた日の午前に1時間。6つの対象を順に撮れば、1ページ分の写真が揃います。
この記事を書いた人
しがビズ(株式会社トリプルエッグ)
滋賀県の中小企業向けに、会社サイトの作り直しと、生成AIの業務導入を行っています。撮影は別途費用として料金ページに明記しています。
出典
- 西澤丞「工場や工事現場を撮影する時の心得」
(安全の考え方、機密の三段階確認、作業者を演出しないこと)