何人かの社員が、個人でChatGPT Plusを契約して仕事に使っている。会社のメールアドレスで登録し、月々の料金は経費で精算している。そこで会社としてChatGPT Businessを契約することにしたら、社員に聞かれた。「今までの履歴は、どうなるんですか」。 この記事は、その答えと、招待を送る前に会社が決めておくことを書いたものです。OpenAIの公式ヘルプは2026年10月27日と28日に更新されたばかりで、仕様は今後も変わります。以下は10月28日に確認した内容です。 なお、当社はChatGPTの販売代理店ではありません。特定のサービスの契約を勧める立場にはありません。

招待と、会話の移行は別の手続き

最初に誤解を1つ外します。会社がBusinessを契約しても、社員の個人の会話が自動で会社に移るわけではありません。

公式ヘルプは、ワークスペースへの参加と、個人のコンテンツの移行を「別の手順」としています。流れはこうです。

  1. 会社の管理者が、社員のメールアドレスに招待を送る
  2. 社員が、同じメールアドレスでサインインして参加する
  3. 社員が自分で、個人の会話を会社のワークスペースに統合するか、分けておくかを選ぶ

3を選ぶのは社員です。会社ではありません。公式ヘルプには、Businessの場合、「管理者は統合または削除を強制できません」と書かれています。会社にできるのは、どうしてほしいかを先に伝えることだけです。

招待を送る前に、社員ごとに確かめる3つ

ここが一番手間のかかるところで、一番飛ばされやすいところです。社員1人ずつ、次の表を埋めてください。

確かめることなぜ必要か
どのメールアドレスでChatGPTを使っているか招待と違うアドレスで入ると、履歴が見えなくなったように見える
どこで支払っているか(ウェブ、iPhone、Android)アプリで払っている分は、自動では止まらない
個人の会話に、私用のものが混ざっているか統合すると、選べずに全部移る

どのメールアドレスで使っているか

公式ヘルプは、招待を承諾するときに同じメールアドレスでサインインするよう求めています。別のアドレスや新しいアカウントで入ると、本来見えるはずのワークスペースや履歴が無いように見えることがある、とも書いています。

問題は、会社のメールアドレスで個人契約を作っている社員です。仕事で使うのだからと、会社のアドレスで登録するのは自然な流れです。この場合、そのアカウントは個人のものなのに、会社のメールが使えなくなった時点で本人も入れなくなります。これは次の節と、退職の節で効いてきます。

どこで支払っているか

統合すると、ウェブで支払っている個人のサブスクリプションは自動で解約され、使っていない期間の分が返金されます。ところが、iPhoneのApp StoreやAndroidのGoogle Playで支払っている場合は、それぞれのストアで自分で解約する必要があります。

経費で精算していた場合、ここを見落とすと、会社のBusinessと個人のPlusを二重に払い続けます。精算の明細で、支払先がOpenAIかAppleかGoogleかを見てください。

私用の会話が混ざっているか

社員本人にしか分かりません。だから聞きます。

この答えが、次の節の判断を決めます。

統合するか、分けておくか

統合すると、戻せないし、選べない

公式ヘルプが挙げている統合の性質は、次の4つです。

  • 取り消せない。 会社のワークスペースから個人のワークスペースに戻す機能は無い
  • 選べない。 移す会話、プロジェクト、ファイルを1件ずつ選ぶことはできない
  • 会社のルールの下に入る。 移した会話には、組織のアクセスと保持のポリシーが適用される
  • 一部は移らない。 古い会話や長く続いている会話の一部は、移したあとに取り出せなくなることがある

WEEL(AI関連のメディア)の移行手順の記事も「元に戻せない」とは書いています。ただ、選べないことと、会社の保持ルールに入ることには触れていません。会社にとって重いのは、むしろこの2つです。中身を選べないからです。社員が個人で調べた病院のことや家族の相談が、業務の会話と一緒に会社のワークスペースに入ります。

分けておくと、個人の支払いが続く

分けておく場合、個人のワークスペースと会社のワークスペースを切り替えて使えます。中身は別々に保たれ、個人の会話が会社の人に見えることはありません。

その代わり、個人のサブスクリプションは解約するまで続きます。経費精算を止める日を決めておかないと、ここでも二重払いになります。

当社の勧め方

両方を並べて「状況に応じて」とは書きません。当社は次のように勧めています。

  1. 統合は、業務の会話しか入っていない社員だけにする。 私用の会話が混ざっているなら分けておき、必要な業務の会話だけを、統合の前に本人が保存しておく
  2. 分けておく社員は、個人のサブスクリプションの解約日を決める。 経費精算はその月で止める
  3. 会社のアドレスで作った個人アカウントは、業務専用にする。 私用で使い続けたい人には、自分のアドレスで別のアカウントを作ってもらう

3は、公式ヘルプ自身が勧めている形です。個人利用には、本人が所有し管理しているメールアドレスで別のアカウントを使うよう、従業員に案内してほしいと書いています。

全員一律に統合させたくなりますが、Businessでは強制できません。ルールを先に言葉にして、招待と一緒に渡す方が早く片付きます。

退職したとき、会話はどうなるか

ここを社内のルールに1行足してください。

公式ヘルプによると、統合した会話は、会社のワークスペースから外れたりアクセス権を失ったりすると、本人も見られなくなります。個人のワークスペースに戻ることはありません。

会社のアドレスで作った個人アカウントも同じです。退職して会社のメールが使えなくなると、そのアカウントとデータにも入れなくなるおそれがある、と公式は書いています。

会社から見れば、これは困ることではありません。業務の会話が社外に持ち出されない、ということでもあります。ただし、社員にとっては「辞めたら全部消える」に近い。入社や切り替えの時点で、この扱いを本人に説明しておく必要があります。 後から知ると揉めます。

社内ルール全体の作り方は社員が使い始めた生成AI。先に決める3つと、後でいい6つにまとめました。

この手順で防げないこと

会社の契約に移しても、自分のアドレスの個人アカウントで仕事を続ける社員は、会社からは見えません。 個人契約のままだと会社から何も分からないことは、社員がAIを使っているかは、「使っていますか」では分からないに書きました。移行は、その状態を減らす手段であって、なくす手段ではありません。

また、Businessを契約する前に、すでに払っているMicrosoft 365やGoogle Workspaceに生成AIが含まれていないかを確かめる価値はあります。人数分の契約が要らないこともあります(ChatGPTを会社で契約する前に、すでに払っているMicrosoft 365かGoogle Workspaceを確かめる)。

当社のAI初期設定・研修(50,000円〜、税別)では、こうした切り替えの順番と社内ルールを、実務のテンプレートと2時間の研修と合わせて整えます。料金と範囲は料金と対応範囲に載せています。

しがビズへ無料相談する

ご相談のときは、会社名と、今ChatGPTを使っている人数、支払い方(個人の経費精算か、会社の契約か)を教えてください。

まとめ

今日やることは1つです。ChatGPTを仕事で使っている社員に、「どのメールアドレスで、どこで払っているか」を聞いて、表にしてください。

招待を送るのは、その表が埋まってからで間に合います。

この記事を書いた人

しがビズ(株式会社トリプルエッグ)

滋賀県の中小企業向けに、会社サイトの作り直しと、生成AIの業務導入を行っています。

運営会社と記事の確認方針 / 公開制作事例と支援の具体例

出典