サイトから問い合わせは来ている。ただ、話がまとまるところまで行かない。広告を出すか、記事を増やすか、という相談を社内でしていたら、「そもそも返信が遅いんじゃないか」という声が出ました。誰も否定できません。実際に何時間かかっているのか、測ったことがないからです。 この記事は、それを測る手順です。問い合わせ管理システムは要りません。メールの受信時刻と返信時刻を並べて引き算するだけです。 直近20件分で、30分かかりません。そして多くの場合、出てくるのは「遅い」ではなく、別のものです。

直近20件の、受信時刻と返信時刻を並べる

まず測ります。改善の話はその後です。

問い合わせ対応の記事を探すと、ほとんどが管理ツールの導入で終わります。ツールを入れれば確かに可視化されますが、今の状態を知るためだけに月額を払う必要はありません。 過去のメールに全部残っています。

なぜ20件か

10件だと、季節や担当者の偏りが出ます。展示会の直後の2週間と、閑散期の2週間では中身が違います。

20件なら、たいていの中小企業で数か月分をカバーします。1件を探して2つの時刻を書き写すのに1分として、20分。多くても30分で終わります。

50件にしても結論は変わりません。時間をかけた分だけ、実行されない確率が上がります。

自動返信は返信に数えない

ここを間違えると、全社が1分以内という結果が出ます。

フォームからの自動返信は「受け取りました」という通知であって、問い合わせへの回答ではありません。発注を検討している相手が待っているのは、自動返信ではなく人間の一言目です。

測るのは、次のどちらかが最初に起きた時刻です。

  • 担当者が書いたメールを送った
  • 担当者が電話をかけた(つながらなくても、かけた時刻)

電話をかけたのに記録が無い、という場合はそこで止まります。その場合は、電話をかけたら1行メモを残すところから始めてください。

並べ方

表計算ソフトで足ります。

列内容
受信日時フォームからの通知が届いた日時
一次返信日時人が返した日時。自動返信は入れない
経過時間引き算。時間単位で出す
種類見積依頼/技術的な質問/採用/営業 など
担当返した人

「種類」の列を入れてください。あとで効いてきます。

平均を出してはいけない

20件分の経過時間が並んだら、平均を出したくなります。出さないでください。

平均は、1件で壊れます。19件が1時間で返っていても、1件を5日放置していれば、平均は7時間近くになります。逆に、5日の放置が1件あっても、他が速ければ平均は「まあまあ」に見えます。

どちらの方向にも誤解させる数字なので、使いません。

見るのは中央値と、最も遅かった1件

中央値は、20件を速い順に並べたときの真ん中です。表計算ソフトなら関数で出ます。これが自社の実力です。

そして、最も遅かった1件を必ず見ます。 そこに問題が全部入っています。

なぜその1件が遅れたのか。誰に届いたのか。種類は何だったのか。この3つを追いかけると、たいてい原因が見つかります。そして、原因は「忙しかった」ではありません。

なお、「金曜の18時に来て、月曜の9時に返した」を15時間と数える会社があります。営業時間で計算すると、そうなります。

やめてください。相手は63時間待っています。発注側は時計で待っていて、こちらの営業カレンダーを知りません。

土日を含めて数えたうえで、「金曜の夕方以降は月曜になる」という事実を認識する。そのうえで自動返信に「土日を挟む場合は翌営業日に回答します」と書いておく。数字をごまかすのではなく、相手の期待を調整するほうが実効的です。

測ると、遅れではなく「気づいていない」が見つかる

ここが、実際に測ったときにいちばん驚かれる部分です。

最も遅かった1件を追いかけると、担当者が忙しくて後回しにしたのではなく、そもそも問い合わせが来たことを知らなかった、というケースが多く出てきます。

原因はだいたい次の3つです。

通知メールが迷惑メールに入っている

フォームからの通知は、サイトのサーバーから送られます。送信元のドメインと、実際に送っているサーバーが一致しないことがあり、受信側で迷惑メール扱いになります。

問題は、入り始めた日が分からないことです。半年前から入っていたのに、誰も気づいていないことがあります。

確認は簡単です。迷惑メールフォルダを開いて、フォームからの通知が入っていないか見てください。入っていたら、迷惑メールではないと指定して、受信リストに登録します。

通知の宛先が現役でない

フォームの通知先アドレスは、サイトを作ったときに設定したままになっています。設定した担当者が退職していたり、部署が変わっていたりします。

転送設定が残っていれば届きますが、その転送も止まっていることがあります。誰にも届かず、フォームだけが動いている状態です。

今の担当者のアドレスになっているか、制作会社に確認するか、管理画面を見てください。

誰が返すか決まっていない種類がある

3つめが、最も見つけにくいものです。

測ってみると、遅い数件が全部同じ種類だった、ということがあります。技術的な質問、他府県からの問い合わせ、既存の取引先からの仕様変更。誰が返すか決まっていない種類が、そのまま滞留します。

だから「種類」の列を入れました。遅い順に並べて、種類が偏っていたら、担当を決めるだけで中央値が動きます。

この3つは、どれも費用がかかりません。そして問い合わせを増やす施策より先にやるべきものです。 通知が届いていない状態で広告を出すと、増えた分だけ取りこぼします。

「7割が24時間以内を期待」という数字を、自社に当てはめない

問い合わせ対応を調べると、この数字に当たります。「回答を待てる限界は24時間以内が70.5%」というものです。

出どころを確認しました。PR TIMESが公表した調査で、2018年5月23日から30日に実施、対象は15歳から84歳の男女853人、インターネット調査です。

つまり、一般の消費者に聞いた数字です。 商品を買った人が、ショップに質問したときの話をしています。

読者の会社が受けているのは、他社の発注担当者からの問い合わせです。相手は仕事として複数社に声をかけていて、社内の承認手続きがあり、自分の締切で動いています。消費者の我慢の限界とは、待ち方の構造が違います。

この数字が間違っているわけではありません。対象が違うだけです。 他所の記事でこの数字を見たときは、自社の相手と同じ層に聞いたものかを確かめてください。

では自社の目標は何時間か。それも、外から持ってくるものではありません。測った中央値を起点に、まず最悪値をなくす。 これが最初の目標になります。

測った後に、最初に直す1つ

20件並べて、中央値と最悪値が出たら、直すのは1つだけにします。

測って分かったこと最初に直すこと
最悪値の原因が通知の不達だった通知先の設定と迷惑メールの確認
遅い数件の種類が偏っていたその種類の担当を決める
全体的に遅く、担当も通知も問題ない一次返信のひな形を作る(回答ではなく、受領と回答予定日を返す)

3つめの「一次返信のひな形」は、回答を急ぐためのものではありません。「◯日までに回答します」と先に返しておけば、相手は他社に流れずに待てます。 調べるのに3日かかる質問でも、3日待たせたことにはなりません。

複数を同時に直さないでください。1つ直して、1か月後に同じ20件の測り方をすると、効いたかどうかが分かります。効果をいつ判断するかはサイトを直した効果の記事に書いています。

問い合わせの数え方そのものは別の記事にまとめました。件数と返信時間は、両方あって初めて状況が見えます。

この測り方で分からないこと

ここまでの手順で出るのは、メールで来た問い合わせに対する一次返信の速さだけです。次の3つは測れません。

  1. 電話での問い合わせ。 記録が残らないので、この方法の外にあります。件数だけでもメモを残すと、サイト経由の反応が正しく見えるようになります
  2. 返信の中身が良かったかどうか。 速く返しても、質問に答えていなければ意味がありません。速さは必要条件であって、十分条件ではありません
  3. 失注の理由。 返信が遅れたから逃したのか、価格や納期で折り合わなかったのかは、この数字からは分かりません

「返信を速くすれば受注が増える」とまでは言えません。ただし、問い合わせが来たことに気づいていなかった分は、確実に失っています。 そこだけは、測れば分かるし、直せます。

通知の不達や担当の未定をひととおり確認しても遅さが残る場合は、フォームの受け口そのものを見直す段階です。しがビズでは、会社サイトの問い合わせ導線の設計から扱っています。

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まとめ

問い合わせを増やす前に、今来ている分を取りこぼしていないか確かめてください。ツールは要りません。直近20件のメールで測れます。

平均ではなく中央値と最悪値を見る。営業時間ではなく実時間で数える。この2つを守れば、30分で自社の状態が出ます。

今日やることは1つだけです。自社の問い合わせフォームから、自分あてに1件送ってみてください。 通知が届くか、どこに届くかが、測る前に分かります。

この記事を書いた人

しがビズ(株式会社トリプルエッグ)

滋賀県の中小企業向けに、会社サイトの作り直しと、生成AIの業務導入を行っています。

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