会社サイトを、別の制作会社で作り直すことにした。今のサイトの文章や写真は使い回したい。ただ、10年前に作った制作会社とは疎遠で、契約書がどこにあるかも分からない。勝手に使って、あとで揉めないかが気になる。 この記事は、旧サイトの素材を一つずつ「誰の権利か」に仕分けて、使えるもの・確認が要るもの・使えないものに分けるためのものです。契約書が見つからないときの手順と、旧制作会社に送る確認のメールの文面も書きます。 先に結論を書きます。自社で作った文章や写真から、会社が利用できる権利を持っているか確認します。 社員の制作物でも、職務著作の要件や契約を確認し、人物の写真は掲載の許可も確かめます。 確認が要るのは、制作会社が撮った写真、素材サイトの写真、デザイン、ロゴの4つです。
素材ごとに、誰の権利かが違う
「サイトの著作権は誰のものか」と考えると、話が大きくなりすぎます。素材ごとに分けると、ほとんどは簡単に決まります。
| 素材 | 誰が作ったか | 作り直しで使えるか |
|---|---|---|
| 会社概要・事業内容の文章 | 自社の社員が書いた原稿をもとに、制作会社が整えた | 使える。 会社の住所や事業の内容といった事実そのものは、誰の著作物でもない。自社で言い回しを書き直して使う |
| 文章 | 制作会社のライターが一から書いた | 契約書の確認が要る |
| 写真 | 自社の社員が撮った | 職務著作や利用許諾、写った人の掲載許可を確認して使う |
| 写真 | 制作会社やカメラマンが撮影に来た | 契約書の確認が要る。撮影した人に権利が残っていることがある |
| 写真 | 素材サイトの写真(工場や握手の写真など) | 新しいサイトでは使わない前提にする。買ったのが制作会社なら、ライセンスは制作会社に付いている |
| デザイン(色の組み合わせ、配置、図案) | 制作会社 | 作り直すなら使わない。似せて作らない |
| ロゴ | 制作会社がデザインした | 契約書の確認が要る。名刺・看板・車両にも使っているなら、最優先で確かめる |
| 施工事例・製品一覧のデータ | 自社が出した情報 | 使える |
いちばん見落とされるのは、素材サイトの写真です。
素材サイトの写真は、買った人にライセンスが付きます。制作会社が自分のアカウントで買って、お客様のサイトに使っている場合、作り直しのときに新しい制作会社が同じ写真を使ってよいかは、素材サイトの規約次第です。
これは写真に限った話ではありません。ピクスタは2026年5月、イラストの制作依頼について、それまでは納品先の企業が組織内で使うことしかできず、加工や二次利用ができなかったため、納品先でも二次利用できる新しいライセンスを始めたと発表しています。買ったのは制作会社、使うのは発注した会社、という形には、こうした制限が付いていることがある。 作り直しでは、素材サイトの写真は外して、自社で撮り直すのが一番早く片付きます。撮り方は工場と製品の写真を、社員がスマートフォンで撮るにまとめました。
ロゴは別格です。サイトだけでなく、名刺、封筒、看板、社用車、制服にも使っているはずです。ロゴの権利が制作会社に残っていると、サイトを離れても、ロゴを使い続けるたびに許可の問題が残ります。
写真がそもそも使えるサイズかどうかは、権利とは別の問題です。ホームページを作り直すとき、残せるものと残せないもので、素材ごとの判定を書いています。
契約書を探す。見る条項は2つ
契約書が見つかったら、見る条項は2つです。
- 著作権の帰属。 「本件成果物の著作権は、納品と同時に甲(発注者)に譲渡する」のように書いてあれば、譲渡の対象と範囲を確認します。翻案などの第27条・第28条の権利は、明記がなければ譲渡人に留保されたと推定されます。譲渡がなくても利用許諾がある場合があるため、契約全体を確認します
- 著作者人格権を行使しない、という一文。 著作権を譲り受けても、作った人には「勝手に変えられない権利」が残ります。契約書に「著作者人格権を行使しない」とあっても、合意の対象・範囲と第三者の権利を確認します
atsoho の解説やアイミツのまとめも、この2つの条項を契約書に入れるよう勧めています。ただ、どちらも、これから契約する人向けの話です。10年前の契約書が手元に無い会社が、どうすればいいかは書いていません。
契約書が見つからないとき
10年前の契約書は、見つからないことの方が多い。次の順で探します。
- 経理の書類を見る。 制作費を払った年度の支払いの記録から、請求書と見積書を探す。見積書の中に「著作権譲渡」「権利の帰属」の行があることがある
- メールを探す。 当時の担当者のメールで、制作会社の名前と「契約」「見積」で検索する。担当者が退職していても、メールの記録が会社に残っていることがある
- 旧制作会社に聞く。 次の章のメールを送る
3まで行っても分からないときは、自社で書いた文章と、自社で撮った写真のうち、利用権限を確認できるものを使うと決めます。それで作り直しの大半は進みます。分からないものを使わないのが、一番揉めない方法です。
旧制作会社に送る確認のメール
疎遠になった制作会社でも、まずは確認のメールを送ります。文面は、相手を責めない形にします。
件名:当社ホームページの素材の扱いについてのご確認
本文:
お世話になっております。株式会社◯◯の◯◯です。
◯年に制作いただいた当社のホームページ(https://〜)について、このたび作り直しを検討しています。その際、現在のサイトの素材を使えるかを確認させてください。
- 制作時の契約で、成果物の著作権の扱いはどのようになっていましたか。契約書の写しがあれば、いただけますでしょうか
- サイトに使っている写真のうち、御社が撮影したもの、素材サイトから購入したものを教えてください
- ロゴのデザインは御社で作成いただいたものでしょうか。その場合、今後の使用について確認させてください
長年のご対応、ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
2の答えで、素材サイトの写真がどれかが分かります。それだけでも、このメールを送る意味があります。
返事が来ない、あるいは返事の内容で揉めそうになったら、そこで弁護士に相談します。それまでは、自社で書いた文章と撮った写真だけで作り直しを進められます。
これから作り直す契約で決めておくこと
同じことを10年後に繰り返さないために、新しい制作会社との契約では、次を書面で決めておきます。
- 成果物の著作権を譲渡する範囲と時期を定め、第27条・第28条の権利や第三者素材の扱いも明記する
- 著作者人格権を行使しない
- 素材サイトの写真を使うなら、どれを使ったかを一覧で渡してもらう
- ドメインとサーバーは、自社の名義で契約する
しがビズでは、作り直しの流れの最後に、データと管理権限を会社側に残すことを決めています(サービスの流れのステップ5)。ドメインの名義の確かめ方は会社サイトを作り直す前に確認する、ドメインとメールの4項目にあります。
まとめ
今日やることは1つです。今の会社サイトの写真を全部並べ、自社で撮ったものに印を付けてください。
印の付かなかった写真が、確認の要る素材です。その一覧を、上のメールの2番に添えて旧制作会社に送れば、仕分けは終わります。
ご相談のときは、会社名、サイトのURL、時間がかかっている業務を書いていただくと、話が早く進みます。
この記事を書いた人
しがビズ(株式会社トリプルエッグ)
滋賀県の中小企業向けに、会社サイトの作り直しと、生成AIの業務導入を行っています。
出典
- ピクスタ株式会社「納品先の企業・自治体・官公庁での加工・二次利用が可能に イラスト制作依頼、代理店様向けライセンスを販売開始」(2026年5月21日)
- atsoho(ホームページ制作の業務委託契約書と著作権の帰属の解説、2026年7月25日)
- アイミツ(ホームページ制作の契約書についてのまとめ)
- 文化庁「著作権」
