株の移し方と登記は、税理士と司法書士が段取りを組んでくれた。ところが、ドメインの更新の請求書が会長になった先代の自宅に届いている。 登記や契約書の確認と並行して、Webサービスの登録先と管理権限も確認しておきます。請求書の宛名、更新通知の送信先、実際にログインできる人は、それぞれ違うことがあります。 この記事では、社長交代のときにWebまわりで確かめる7つの名義と、先代が元気なうちに移し替える順番を書きます。結論を先に言うと、社長が代わっても、Webの名義は1つも自動では変わりません。
会社のサイトでも、名義は先代個人になっていることがある
「会社のホームページなのだから、会社のもの」。そう考えるのが普通です。実際には、名義が会社になっていないことがよくあります。
名義が個人に寄るのは、作った当時の事情から
10年前、15年前にサイトを作ったときのことを思い出してください。担当したのは社長本人か、社長の知人の制作会社だったはずです。
申込書に書く名前は、その場にいた人の名前になります。連絡先のメールアドレスは、社長が個人で使っていたプロバイダのアドレス。Googleのアカウントは、社長の個人のGmail。悪意も手抜きもありません。会社にメールアドレスが1つも無かった時代には、それしか書けなかったのです。
確認する組み合わせは、ドメインの登録者、更新通知の宛先、Googleサービスの管理者です。会社名で契約していても、通知先だけが先代の個人メールという場合は、連絡先の見直しが必要になります。
社長交代そのものでは、どの名義も変わらない
登記で代表者が変わっても、ドメインの登録情報は変わりません。Googleのアカウントも変わりません。それぞれが別々の契約で、別々の名前が入っているからです。
放っておいて困るのは、先代が操作できなくなったときです。 入院した、スマートフォンを替えて二段階認証が通らなくなった、亡くなった。こうなると、名義を移すために先代本人の承認が要る手続きが、急に重くなります。
先代が元気なうちに作る、名義の一覧表
紙1枚で足ります。次の7行を書き出して、右の2列を埋めてください。
| 対象 | 確かめる場所 | いまの名義 | 移す先 |
|---|---|---|---|
| ドメイン | 更新の請求書、登録した会社の管理画面 | 会社 | |
| サーバー | 毎年の請求書 | 会社 | |
| 会社のメール | メールを契約している会社の管理画面 | 会社 | |
| Googleビジネスプロフィール | 設定 → ユーザーとアクセス権 | 会社管理の担当者アカウント | |
| Googleアナリティクス | 管理 → アカウントのアクセス管理 | 会社管理の担当者アカウント | |
| Search Console | 設定 → ユーザーと権限 | 会社管理の担当者アカウント | |
| 制作会社との契約 | 契約書、保守の請求書 | 会社 |
「いまの名義」の列には、人の名前とメールアドレスの両方を書きます。 名前が会社でも、連絡先が先代の個人アドレスなら、通知はそこに届きます。
埋められない欄が出るのが普通です。サーバーとドメインは、制作会社がまとめて契約していて、会社側に請求書が無いこともあります。その場合は制作会社に「登録者名と連絡先メールを教えてください」と聞けば足ります。ドメインの登録情報そのものの調べ方は会社サイトを作り直す前に確認する、ドメインとメールの4項目に書きました。
この表を作るのに、技術はいりません。要るのは先代に1時間座ってもらうことです。どのアドレスで登録したか、パスワードをどこに書いたかを覚えているのは先代だけで、ここが一番の難所になります。
ドメインは、末尾で手続きが違う
ドメインは、末尾が co.jp か、それ以外かで話が分かれます。
co.jp なら、登録者は会社。見るのは担当者のメールアドレス
co.jp は日本の会社だけが登録できるドメインで、登録者は会社そのものです。代表者が代わっただけでは、登録者の変更は要りません。
見るべきは、登録者とは別に入っている担当者の情報です。ここに先代の名前と個人アドレスが入っていることがあります。お名前.comの案内では、co.jp などの属性型JPドメインは、商号変更・事業譲渡・合併のときの手続きと、担当者情報の変更が別の手続きとして分けられています。社長交代で必要になるのは、多くの場合、後者です。
.com や .jp で先代の個人名義なら、名義変更に先代の承認が要る
.com や、末尾が .jp だけのドメインは、個人の名前でも登録できます。先代の個人名で登録されていたら、会社の名義に移す手続きが要ります。
お名前.comの登録者名義変更では、いまの登録者と新しい登録者の両方に承認依頼のメールが届き、両方が承認しないと手続きが取り消されます。 つまり、先代のメールアドレスが生きていて、先代がそのメールを開けることが前提です。いまの登録者のアドレスが使えない場合の代わりの方法も用意されていますが、それも管理担当者が別に設定されていればの話です。
先代が亡くなった後だと、手続きが重くなる
先代が承認できない状態での名義変更は、登録している会社ごとに扱いが違い、書類での手続きになることがあります。どの書類が要るかは、登録している会社に聞くしかありません。
先代が承認できるうちに、登録先が指定する手順を確認して進めてください。必要な承認や書類は、ドメインの種類と登録先によって異なります。 相続の手続きと重なると、Webの話は後回しにされ、その間に更新期限が来ます。
Googleのアカウントは「招待してから譲る」
共通するのは、新しい担当者が操作できることを確かめてから、旧担当者の権限を整理する順番です。ただし、サービスごとに権限の名称と手続きが異なります。
Googleビジネスプロフィール
現在のオーナーから後任のGoogleアカウントを追加し、招待を受けてもらいます。その後、メインのオーナーが後任へメインのオーナー権限を譲渡します。新しく追加されたオーナーや管理者には7日間の操作制限があるため、交代当日にすべて終える予定にはしないでください。Googleグループをオーナーとして追加することはできません。
Googleアナリティクス
アカウントまたはプロパティのアクセス管理で、後任に必要な権限を付与します。ユーザーの追加・削除を引き継ぐ人には管理者権限が必要です。ビジネスプロフィールのような「メインのオーナー」の譲渡ではありません。対象のアカウントとプロパティを取り違えず、後任がデータを閲覧し、必要な管理操作を行えるか確かめます。
Search Console
所有者とユーザーは権限が異なります。後任が継続して管理できるよう、所有権の確認方法も引き継ぎます。先代の権限を削除する際は、先代が使った確認用トークンも確認してください。ユーザー一覧から外すだけでは、確認手段が残って再び所有権を取得できる場合があります。
会社が管理する担当者ごとのアカウントを使い、パスワードの共用は避けます。復旧用の連絡先と二段階認証も引き継ぎ対象です。旧担当者の権限は一律に半年残すのではなく、動作確認と業務上の必要性を踏まえて削除または縮小します。退任・退職後に不要なアクセスを残さないことも確認項目に入れてください。
株と相続の話は、税理士と司法書士へ
株式の移し方、相続、事業承継税制は、この記事では扱いません。税理士と司法書士の領域です。
先代が亡くなった後のドメインの名義変更で、どの書類が通るかも書けません。登録している会社ごとに違うからです。
もう1つ。名義を会社に移しても、それを管理する人がいなければ同じことが繰り返されます。 契約の通知先は会社が受信を管理できるアドレスにし、Googleサービスへのログインには会社が管理する担当者ごとのアカウントを使います。通知用アドレスと操作するアカウントを分けて記録しておけば、次の交代でも確認しやすくなります。
当社は、作り直しを引き受けるときに、ドメイン・サーバー・各種アカウントの管理権限を会社側に残す形で納めています(制作の流れ)。名義の確認だけの相談もお受けしています。
まとめ
今日やることは1つです。ドメインの更新の請求書を探して、宛名を見てください。
先代の個人名なら、一覧表の1行目が埋まりました。残りの6行は、先代に1時間もらえる日に一緒に埋めてください。
相談のときは、会社名、サイトのURL、分かっている範囲でドメインの登録先を教えてください。
この記事を書いた人
しがビズ(株式会社トリプルエッグ)
滋賀県の中小企業向けに、会社サイトの作り直しと、生成AIの業務導入を行っています。
出典
- お名前.com「登録者名義変更」(新旧の登録者双方の承認が必要で、承認されない場合は手続きが取り消されること)
- お名前.com「属性型JPドメインの登録者情報変更」(商号変更・事業譲渡・合併と、担当者情報変更が別の手続きであること)
- Google ビジネス プロフィール ヘルプ「ビジネス プロフィールのオーナーと管理者を管理する」(メインのオーナーの譲渡にはほかのオーナーか管理者が必要であること)
- Google 広告 ヘルプ「Google 広告、Google アナリティクス、Google Merchant Center のアカウントのオーナー権限を譲渡する」
- Google「ビジネスプロフィールのメインのオーナー権限を譲渡する」
- Google「アナリティクスのユーザーおよびユーザーグループの追加、編集、削除」
- Google「所有者、ユーザー、権限の管理」
