来年4月に、社名を変えることが決まった。登記、税務署、銀行、取引先への挨拶状。手続きの一覧の最後に「ホームページ・メール」と1行あって、総務の担当者が任された。会社サイトのアドレスは旧社名の co.jp、社員全員のメールアドレスも旧社名。 この記事は、社名を変えるときに、会社サイトのドメインとメールアドレスをどうするかを決め、変更日から逆算した順番に並べるためのものです。 先に結論を書きます。ドメインは、変えない選択肢もあります。 変えるなら、旧ドメインは手放さずに持ち続けます。co.jp は1つの会社に1つが原則ですが、社名変更のときは新旧を両方持てます。
まず、ドメインを変えるかどうかを決める
社名を変えたら、ドメインも変えるもの、と思われがちです。マネーフォワードの社名変更の解説も、会社サイトのページ名や説明文、Googleビジネスプロフィール、SNSの社名を直すよう書いていますが、ドメインそのものを変えるかどうかには触れていません。
ドメインを変えると、会社サイトのアドレスと、社員全員のメールアドレスが変わります。名刺、封筒、カタログ、見積書の書式、取引先の発注システムに登録されたアドレス。直す場所は、サイトよりもメールの方がはるかに多い。ここが重い。
判断は次のとおりです。
| 状況 | 勧める判断 |
|---|---|
| 旧社名のドメインが、新しい社名とかけ離れていて誤解を生む(例:旧社名に事業と違う言葉が入っている) | 変える |
| 合併などで、新しい会社としての出発をはっきり示したい | 変える |
| 社名の一部が変わるだけ(「◯◯工業」→「◯◯」など)で、ドメインが略称や英字で、新しい社名と並べても違和感が少ない | 変えない |
| 取引先の発注システムやEDIに、メールアドレスが多数登録されている | 変えないか、変えるなら1年以上かける |
変えない、も立派な判断です。 ドメインは住所ではなく、連絡先の一部です。社名と完全に一致している必要はありません。
変えるなら、旧ドメインは手放さない
ドメインを変えると決めたら、ここが一番大事なところです。
co.jp は新旧を両方持てる
co.jp は、日本で登記している会社だけが取れるドメインで、1つの会社に1つしか登録できない決まり(1組織1ドメイン名の原則)があります。新しい社名で co.jp を取ると、旧社名の co.jp は手放さなければならない、と思われがちです。
管理しているJPRS(日本レジストリサービス)は、2014年2月から例外を設けています。社名の変更、合併、事業の譲渡があって、その事実が登記などで客観的に確かめられる場合は、旧社名で登録していた co.jp を使い続けながら、新しい社名で新しい co.jp を登録できます。
旧社名の co.jp を手放す必要はありません。 両方持てます。 手続きは、ドメインを登録しているサーバー会社や制作会社を通して行います。社名変更の登記が済んだあとの、履歴事項全部証明書などが求められることがあります。
メールは少なくとも1年、新旧どちらでも受ける
新しいアドレスに切り替えたあとも、旧アドレスに届いたメールを受け取れるようにしておきます。取引先の担当者のアドレス帳や、自動で送られてくる請求書・発注のメールは、すぐには変わりません。
期間の目安は、少なくとも1年です。Googleは、サイトのアドレスを変えたときの転送(リダイレクト)を、一般に少なくとも1年は残すよう説明しています。メールにも同じだけの期間を取っておけば、年に1回しか連絡の無い取引先にも届きます。
転送の仕組みには注意が要ります。アウラントテクノロジーズの解説は、転送するだけでは、受け取る側の迷惑メール対策の設定によって、メールが拒否されることがあると書いています。旧アドレスで「受け取れる」ことと、新アドレスに「転送する」ことは別です。 どちらの方式にするかは、メールを管理している人に確かめてください。
旧ドメインを手放すと、他人が取れる
旧ドメインを更新しなければ、一定期間のあとに誰でも取れる状態になります。
2026年5月には宮崎県が、運用を終えたサイトのドメイン2つを第三者に取られていたことを公表しました。取られたドメインで、県と無関係のサイトが開かれていた。古い名刺やカタログ、取引先のサイトのリンクから、そこにたどり着く人が出ます。旧社名のメールアドレス宛てに来たメールを、他人が受け取れるようになるおそれもあります。
旧ドメインの更新費は、年に数千円です。 安い保険です。 社名を変えたあとも、何年も持っておく価値があります。
変更日から逆算した順番
ドメインを変える場合の順番です。変えない場合は、表の「サイトの中を直す」行だけをやります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 3か月前 | ドメインを変えるか決める。新しいドメインを取る(co.jp は登記後に手続き) |
| 2か月前 | 新しいアドレスで、メールを受け取れるように設定する。社員に新アドレスを配る |
| 1か月前 | 取引先への挨拶状に、新しいアドレスと切り替えの日を書く |
| 変更日 | 会社サイトの中の社名を直し、新しいドメインで公開する。旧ドメインから新ドメインへの転送を設定する |
| 変更日 | メールの署名を新しい社名とアドレスに替える |
| 1年後 | 旧アドレスに届くメールの数を見て、受け取りを続けるかを決める。旧ドメインの更新は続ける |
co.jp は、登記で社名が変わったことを確かめられるようになってから手続きできます。登記の日と、新しいドメインが使えるようになる日のずれを、制作会社に先に聞いておいてください。
会社サイトの中で直すところ
ドメインを変えても変えなくても、会社サイトの中の社名は直します。見落としやすいのは、目に見えない場所です。
- ページの名前(ブラウザのタブや、検索結果に出る題名)
- 検索結果に出る説明文
- 会社概要の社名、代表者名、沿革(旧社名からの変更を1行入れる)
- ロゴの画像と、画像の説明(代替テキスト)
- フォームの自動返信メールの差出人名と本文
- サイトの一番下の著作権表示(「© 旧社名」)
- PDFのカタログや会社案内
沿革には、「2027年4月、◯◯工業株式会社から株式会社◯◯に社名を変更」と書きます。旧社名で検索してたどり着いた人が、同じ会社だと分かるからです。1行で足ります。
変更後も残る旧社名
会社サイトを直しても、ネットに残る旧社名は消えません。残り続けます。取引先のサイトの協力会社一覧、業界団体の会員名簿、求人サイト、地図サービス。当社が見た例でも、取引先のサイトの一覧に旧社名が残り続けていました。探し方と直し方は自社サイトを直しても、ネットに残った古い電話番号は消えないに書きました。
新しい社名が、同じ地域の別の会社と似ていることもあります。検索したときに別の会社が出てくる場合の考え方は社名で検索すると、同じ名前の別の会社が出てくるときにあります。
ドメインやサーバーの契約が、誰の名義になっているかも、この機会に確かめてください。社長が代わっても、ドメインとGoogleの権限は先代の名前のまま残るに、調べ方をまとめています。
まとめ
今日やることは1つです。新しい社名と、今のドメインを並べて書き、そのまま名刺に刷っても違和感が無いかを確かめてください。
違和感が無ければ、ドメインは変えずに、サイトの中の社名だけを直す。違和感があれば、上の表の3か月前の行から始めます。
ご相談のときは、会社名、サイトのURL、時間がかかっている業務を書いていただくと、話が早く進みます。
この記事を書いた人
しがビズ(株式会社トリプルエッグ)
滋賀県の中小企業向けに、会社サイトの作り直しと、生成AIの業務導入を行っています。
出典
- 日本レジストリサービス(JPRS)「1組織1ドメイン名の原則の例外についての資料」(組織名変更・合併・事業譲渡の場合の複数ドメイン名登録。導入 2014年2月17日)
- Google 検索セントラル「サイト・ホームページ移行について」(リダイレクトは一般的には1年以上維持する)
- ScanNetSecurity「宮崎県が廃止したドメインを第三者が再取得、注意を呼びかけ」(2026年5月29日)
- マネーフォワード クラウド(社名変更の手続きの解説、2026年2月16日更新)
- アウラントテクノロジーズ(取引先のドメイン変更時のメール不達の解説、2026年6月14日)
