営業の担当者が月末で辞める。名刺にも、見積書にも、取引先のアドレス帳にも、その人のメールアドレスが載っている。消していいのか、転送しておけばいいのか。総務で決めることになった。 この記事は、退職日の前にやっておくことを書いたものです。メールの設定だけでなく、会社サイトの側に残っているアドレスまで確かめます。問い合わせが誰にも届かなくなるのは、たいていこちらが原因です。
消すと、取引先からのメールが誰にも届かなくなる
まず、アドレスをすぐに消すのはやめてください。
Microsoftの管理者向けの手順書は、元従業員のアカウントを削除すると、そのアカウントに送られたメールは受信されなくなると書いています。取引先は退職を知らないまま送り、届かないか、送り返されるかのどちらかです。見積の依頼だったら、その仕事は他社へ行きます。
同じ手順書は、削除の前に、メールを別の従業員に転送するか、共有のメールボックスに変えることを勧めています。顧客や取引先が元の従業員のアドレスに送ってくる場合は、アドレスを生かしておける、という説明です。
消すのは最後。その前にやることがあります。
退職日の前に確かめる6か所
Google Workspaceの退職者の手順は、aurant-technologiesやTSクラウドの記事に詳しく書かれています。アカウントの停止、アーカイブ、削除の違いまで分かります。ただ、どれもメールの管理画面の中の話です。
見落とされるのは、メール以外の場所に登録された、その人のアドレスです。当社が会社サイトの作り直しの相談を受けるとき、最初に確かめるのもここです。
| 確かめる場所 | 何が起きるか |
|---|---|
| 1. 問い合わせフォームの通知先 | 問い合わせが辞めた人にだけ届き、誰も読まない |
| 2. サイトの「担当者」「お問い合わせ先」の欄 | 辞めた人の名前とアドレスが載り続ける |
| 3. ドメイン・サーバーの契約の連絡先 | 更新の通知が読まれず、期限切れでサイトとメールが止まる |
| 4. Googleビジネスプロフィール、Googleアナリティクスなどの権限 | 辞めた人のアカウントにしか権限が無く、誰も触れなくなる |
| 5. フォームの迷惑投稿対策(reCAPTCHA)の鍵の持ち主 | 仕様の変更の通知が辞めた人に届き、フォームが止まる |
| 6. 本人のメールの自動転送の設定 | 会社のメールが、辞めた人の個人のアドレスに転送され続ける |
1と2:フォームとサイトの表示
いちばん実害が大きいのが1です。フォームの通知先は、サイトを作ったときに設定したまま、誰も見直していないことがよくあります。確かめ方は簡単で、自分でフォームから送ってみることです。届いた先が辞める人だけなら、通知先を部署の共有アドレスか、2人以上に変えます。問い合わせへの返事の速さを測る方法は問い合わせに何時間で返せているか、ツールなしで測る手順に書きました。
2は、サイトの文章を見れば分かります。担当者の個人名を載せている会社は、部署名に変えておくと、次に人が辞めたときに直さずに済みます。
3から5:契約と権限
3は、作り直しの相談でいちばん多い詰まり方です。確かめ方は会社サイトを作り直す前に確認する、ドメインとメールの4項目に、4の権限の移し方は社長が代わっても、ドメインとGoogleの権限は先代の名前のまま残るに、5は問い合わせが減ったと思ったら、フォームのreCAPTCHAを確かめるにまとめました。
権限は、本人がいるうちなら招待して譲るだけで済みます。辞めたあとでは、名義を証明する手続きになります。
6:個人のアドレスへの転送
本人が、会社のメールを自分のGmailへ転送する設定をしていることがあります。辞めたあとも、取引先からのメールが本人の個人のアドレスに届き続けます。この設定は会社のメールの管理画面の側にあるので、退職日に外してください。詳しくはGmailで会社のメールを読めなくなるので転送に替えるで触れました。
転送だけにしない。自動返信で後任を知らせる
辞めた人のアドレスに届くメールを後任に転送する。ここまでは、どの解説にも書いてあります。足りないのは、送った側にどう知らせるかです。
転送だけだと、取引先は退職を知りません。次も、その次も、辞めた人のアドレスに送り続けます。後任が受け取っていても、取引先のアドレス帳はいつまでも直りません。
だから、転送と一緒に自動返信を設定します。文面は短くて構いません。
〇〇(退職者の名前)は、2026年11月30日をもって退職いたしました。今後のご連絡は、営業部 △△(後任の名前、後任のアドレス)までお願いいたします。このメールは△△にも転送されています。
最後の一文が大事です。送った人が「同じ内容をもう一度送り直すべきか」と迷わずに済みます。
期間は区切ります。 当社の目安は、取引先との連絡が一巡する期間です。毎月の発注がある取引先なら3か月、年に数回の取引なら1年。統計に基づく数字ではなく、取引の周期から決める、という考え方です。期間が過ぎたら、届くメールの数を見て、ほとんど来ていなければアドレスを閉じます。
会社のメールの種類で、残し方が違う
会社のメールがどこで動いているかで、取れる手段が変わります。
| 会社のメール | 残し方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| サーバーに付いたメール(レンタルサーバーなど) | アドレスを残し、転送と自動応答をサーバーの管理画面で設定 | 管理画面に入れる人が社内にいるか。制作会社しか入れないことがある |
| Microsoft 365 | 転送するか、共有メールボックスに変える | Microsoftの手順書では、ライセンスを外すとメールは30日保持されたあと削除される。先に変換を済ませる |
| Google Workspace | 停止、アーカイブ、削除のどれかを選び、転送や後任へのエイリアスで受ける | 削除すると、移していないデータは消える。手順はaurant-technologiesの記事が詳しい |
Microsoft 365とGoogle Workspaceは、どちらもユーザーごとに料金がかかります。辞めた人の分を払い続けないように、転送か変換を済ませてからライセンスを外す、という順番です。
サーバーのメールで、管理画面に入れる人が社内にいない場合は、退職より先にそれを解決する必要があります。
本人の個人的なメールの扱い
会社のアドレスにも、私的な連絡が混ざっていることがあります。辞めた人宛のメールを後任や上司が読んでよいか。日本の人事部のQ&Aでも、専門家の回答は「社内で扱いを決めておけば問題ない」「個人宛の閲覧は限定すべき」と分かれていました。
この判断は、当社がする立場にありません。決めておくのは2つだけです。誰が受け取るかと、そのことを本人に退職前に伝えるか。伝えておくと、後の行き違いを防げます。
ご相談のときは、会社名とサイトのURLを教えてください。フォームの通知先と、ドメインの契約の連絡先を一緒に確かめます。
まとめ
今日やることは1つです。会社サイトの問い合わせフォームから、自分宛にテストを1通送ってください。
通知が誰に届いたかを見れば、6か所のうち一番大事な1つ目は確かめ終わります。届いた先に、辞める予定の人や、もう辞めた人がいないかを見てください。
この記事を書いた人
しがビズ(株式会社トリプルエッグ)
滋賀県の中小企業向けに、会社サイトの作り直しと、生成AIの業務導入を行っています。
出典
- Microsoft Learn「元従業員を削除する - 概要」(転送または共有メールボックスへの変換、アカウント削除後はメールを受信しない、ライセンスを外すとメール等は30日保持後に削除。2026-10-28に確認)
- Google Workspace 管理者ヘルプ「離職した従業員のデータを保持するためのオプション」
- aurant-technologies「退職者のGmail/Workspace データ引き継ぎ」
- 日本の人事部「退職後に届く本人宛のメールの転送・共有は法的に問題ありませんか」
